砂岡事務所プロデュース 音楽劇「Love's Labour's Lost」

恋は人をバカにする、なーんて言葉は耳タコなくらいよく聞く言葉ですが、それはシェイクスピアが生きた時代も同様。
これは、聡明であったはずの男たちが、魅惑的な女性に惚れてしまい、おバカになる物語。




「靭やかな未成年」と称され、「ゴツいじじい」と返す、言葉の悪さがありつつも言葉のキレがすごいモス。発音の甘さだったりとか表情のポワッとした感じが、舞台初出演となる藤田峻平さんの感じにピッタリ。長身だけど、12,3歳くらいの少年に見えてしまうあの愛くるしさときたら。

無知で愚かだったのか、その面をかぶったピエロだったのか、コスタードは結局どちらだったのでしょうか。それを飄々と演じる吉田翔吾さんの底知れない感じが、コスタードの気味悪さを増長させていて、この物語で一番恐ろしいと感じてしまいました。道化師なんて敵に回したくない。

ジャケネッタの素朴なかわいさがたまりませんでした。すごくアバウトな人柄な印象をもたせつつも、女性の小悪魔な部分を集約したような、ビッグスマイルと上目遣いがとてもズルいなと感じてしまい、新部聖子さんのズルいなぁと思う部分が余すところなくキャラクターに表現されていました。

アーマードは恐ろしさがない、愛くるしい道化師でした。なんとなく、これまでは自分に恋をしていたんじゃないかと思わせるくらいの、自信からくる道化の面が恋によっていとも簡単に砕かれるとは。谷山知宏さんのメロディアスな語り口がアーマードの滑稽さを引き立たせていました。

ボイエットは策士です。なぜフランス国は王女の側近に彼をおいたのか、きっと政治における参謀役に立てていたのであれば、政治力が高まっていただろうに、と思わせる人。ただ、きっと彼はそういうことは望まず、駆け引きを楽しむブローカー。澤田慎司さんの飄々としたお芝居、細やかな演技が、フランス国側の心の余裕を感じさせました。


デュメインとキャロラインはコミカルなカップルでした。
エロさが止まらないジョジョ立ちなら俺に任せろ!と声がしそうなデュメインを演じる鈴木陽丈さんと、フランス国側の中では素直な末っ子感を出していたキャロライン演じる吉田愛さんは、実は一番カラーがパキッと別れたアンバランスなバランスな印象。

ロンガウィルとマライアは見つめ合う視線の通りまっすぐなカップルでした。
俺はマライアしか見えていない、もう可愛くって可愛くって仕方ないんだ!!って声が聞こえてきそうなロンガウィル演じる鐘ヶ江洸さんの眼力。そのまっすぐな視線に真っ直ぐな眼差しで返す、でも時折目をそらしてしまうところが可愛らしいマライア演じる和久井優さんの初々しさ。

捻くれ者×捻くれ者が非常に可愛くなるなんて誰が考えただろう。
これまで恋なんて僕から払い下げ、理屈をこねくり回してきたのに、僕は恋におちてしまったぁぁぁぁぁぁぁ!!な、頭を抱え悶絶するビローンがかわいい。狂言回しなビローンが日に日に自由に伸びやかになっていく、土屋神葉さんの憑依力。そして口が立つビローンを口で負かしてしまうほどのキレ者なロザライン。それにロザラインを演じた田上真里奈さんの持つキュートさ、演技における憎めなさをまぶすと、イーッ!!ってなるけどこんなにもかわいいロザラインに仕上がるのかと。この二人の会話が物語の楽しさの一要素であるウィットを表現。

王は二人の王女の尻にしかれています。
清純で少女のような少しの意地悪と高潔さを兼ね備えた石川由依さん演じる王女。1点の曇りもない歌声がまるで聖母のよう。その真逆を行く、ついていきたくなる系王女、セリフの力強さと間がまるで王のような王女の國立幸さん。そんな二人の王女を受け止めた、汗をかきかき、心はタジタジ、内藤大希さんのアンカーっぷりが見事。



しかし、この物語をやるよと聞いて、実際翻訳本を見て、これは本当に面白くなるのだろうかと思っておりましたら、妙ージカルマジックをかました糸井幸之介さんの手腕によって、シェイクスピアとはこんなにPOPなの?と初心者に勘違いさせるくらいの可愛らしさに仕上げたのはお見事。また、歌の達者な演者が多い座組だったこともあり、妙感が薄れているのが摩訶不思議。



若い力なのか、恋のパワーなのか、回を重ねるごとに、セリフが劇場内を自由に軽やかに駆け回る感覚が発生した舞台は初めてでした。恋は聡明な人をもバカにするけれども、おバカもまたよい、いや、おバカでいて!!と意味不明なことを宣うくらいには私もLLLの恋の罠にどっぷりと嵌まっているようです。


とにかく、ビローンとロザラインが可愛すぎて、その関係性が顕著で一番可愛いと思った写真を貼って終わり。(スライド3枚目)

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