エンターテインメントの力を信じている
LOCATE:シアターグリーン BIG TREE THEATER
DATE:3/1、3/3、3/5
「The Entertainer~新しき旗」全8ステージ終幕でございます
— img (@img_officialweb) 2018年3月6日
日に日にたくさんのお客様に来ていただき、最後にはimgとしては初のダブルコールを頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも我々エンターテイナーは誰かのために音を鳴らせ続けます。
ご来場誠にありがとうございました#新しき旗 pic.twitter.com/xIhQjE2uZx
あらすじについてはこちらにて。
初日観劇のあと、舞台上演中の5日間、ずーっと心がざわつきぱなしな演劇体験。
どんどん人が死んで行くので、初日はそこがひっかかって面白いのだけどモヤモヤとしていたのですが、2回目の観劇の際に、「どう生きたいか」という見方で臨んだら、全然違う景色が見えて。
エンタメが抑圧される世の中で、それでも「エンターテインメントの力を信じている」人たちの生き方の煌めきがとてもうらやましく、ただなんとなく生きている私にとって、そういうキャラクターたちがとても羨ましくて、「お前はどう生きたいんだよ」と鋭い切先を突きつけられた気分。
この作品において、鮮烈な印象を残していったのは、1幕ラストのリンダ。
歌によって芸能法へ抗うためのライブにて、より厳罰化された芸能法による制裁を受けてしまう。
銃弾に倒れ、息も絶え絶えになりながらも歌を歌い続けるリンダは純粋な歌う喜びに溢れていて。
リンダは息絶えてしまったけど、幕間、そして2幕の随所でリンダの遺した音が鳴り続いていてリンダの遺した歌は生き続けているのだと、後から猛烈な感情の波が押し寄せてきた。
この後に、様々なキャラクターの死の場面が訪れるのだけど、みんな「どう生きたいか」のほうが強く感じられて、「生」の銃弾にこちらが撃ち抜かれている気分。
特に途中までは要領よくただ生きているという印象だったゲンが、2幕の終盤で決意し、芸能法へ抗い倒れるって、1幕の段階で誰が思おうか。
また、この物語の所謂ダークサイドな部分を担っていた、サエグサやミヅキの、自分の信念を貫く姿も印象的。
芸能法へ抗う人々が「エンターテインメントの力」を信じているのに対して、サエグサなりの信じる考え思想が垣間見えたし、ミヅキがなぜエンターテインメントを憎むのかというのを少しだけでも差し込んだことによって、なぜそうなってしまったのかをこちらに想像させるいい脚本、演出だなと感じています。
この物語って、チラシから終演後に通る道まで、すべてが「The Entertainer~新しき旗~」という作品の一部になっていて、チラシがシアターグリーン前で撮影されていたというのは、谷口さんのツイキャスで知るという、そういえば景色に既視感が。。。
開演前の客入れBGMが初めハウスっぽいノリのいい曲だったのが時間経過と共に奏でる楽器が減っていきBIRDSのメロディーのみ鳴り続け、音が止んだと思ったら、幸音の「音がしないんです」につながるところとか。
先に書いたリンダの歌が生き続けているだったり、散っていった演人たちやリンダたちの物語を幸音が紡いでいく、だとか。
紡いだ物語の後に客席に自分の思いを伝える幸音の声に、リンダと演人の声が重なるところだとか。
BIG TREE THEATERから逃げる幸音であったりとか。
EDを歌うのは主人公の幸音ではなく、幸音の心に音を響かせたリンダだったりとか。
点と線がつながるとはよく言ったもので、この緻密さに気づいたとき感動を覚えるという。
個人的に大好きなゲームであるサガフロ2に、特に音楽の考え方が通じる部分があって、Twitterの感想の7割くらい音楽とか歌声とかそっちの話だったような、なんて思い返したり(笑)
Twitterにも書いたのですが、この物語は切り取り方によって見え方がだいぶ違ってくるのだと思います。
だけど、その中心にあるのはエンターテインメントで、enter(=間)tain(=つかむ)ment(=こと)、結びつきだったり、心をつかむことであったり、「エンタメ」ではなく、きちんとエンターテインメントの本質を中心に構成されていたのが素晴らしいなと感じています。
実は、冬の四重奏「Fancy you」の共同脚本のお一方が八重島さんで、そのときのテイストとはまるっきり違い、その事前イメージと相まってこの物語は鈍器で心をなぶられる的な感じになってしまいました(笑)、上演中の5日間は心がざわつきすぎて色んな意味で疲弊した(笑)
が、色々想像するのがとても楽しくもありました。
次回作の「エディットピザフ」期待しておりますし、「The Entertainer~新しき旗~」のコメンタリイベント?ライブイベント?も開催を心待ちにしております(笑)
それでは最後に、Twitterで書いていることとかぶりそうですが印象に残った役者さんの感想を書いて終幕とさせていただきます。
八坂沙織さん(幸音役)
初日、1幕終わった時の感想が、「なんて不器用な役者さん!」
その不器用さが「幸音」にはとても必要な要素で、八坂さんじゃないときっと今回上演した「The Entertainer~新しき旗~」の内容のようにはなっていないだろうなと感じています。
幸音として観客に語りかける言葉も、そして千秋楽にて八坂沙織として観客に語りかける言葉もとても素敵でした。
きっとすんごい気持ちの波が激しくて疲労困憊だったろうなぁと思います、座長お疲れ様でした。南翔太さん(演人役)
この方のもつ優しさとか温かさとかがこの役に本当ピッタリ!
頼りがいがあるんだけど、どこかかまってあげたくなる雰囲気とか、核ミサイルによって何もなくなってしまった東京で、彼の演劇を見て彼に手を差し出されたらそりゃもう握り返すしかないよね。
演人一座の死の場面での「現実が妄想をとびこえてんじゃねーぞ!!」の叫びはこころに突き刺さりました。 この物語、見方によっては主人公が演人とリンダに見えなくもなくって、それくらい大きな印章を残すキャラクターでした。田上真里奈さん(リンダ役)
リンダさん本当に素晴らしかった。*1
演人とリンダ二人っきりの場面で彼女が歌うBIRDSは優しく温かく儚く。
1幕ラストで銃弾で撃ち抜かれる暴力性が先立つのではなく、リンダの届けたい想いや歌への愛が、純粋な感情の波が劇場内に広がり、だから幸音の心の中に音が流れたし、観客側も涙したというか。
このリンダさんは、田上真里奈さんにしかできない役だ!って断言できます。
P3WM終演後にファルロス役の植田君が田上さんを「届ける想いがすごい強い女優」「舞台ならでは、キャラクター以上の感情を出す」と評していたのを改めて思い出すのです。*2
個人的に、演人とリンダ二人っきりの場面が好きで、演人に抱きしめられたときの目の揺らぎだったり、「絶対に逃げろよ」の「うん」にこもった約束を守れないというニュアンスだったりとか。
歌が強烈な印象を残しますが、元から持つ彼女の目や声の演技もやはり好きだなぁ、と感じた次第です。
しかし、演人とリンダさんは、「キミが読む物語」では親子役、田上さん演じる「みずは」は導かれる側の立ち位置で、実は導かれる立ち位置なイメージが強くって、今回のように人を導く立ち位置をこの作品で演じるって、なんだか感慨深いと感じたり。木下彩さん(ミヅキ役)
銃を撃ちまくるミヅキさん最高に楽しそう(ヲイ)
しかし、ただの悪役ではなくて、1幕ラストのリンダとの場面での「なんでこんなことに命かけられるのよ」の部分の声のゆらぎで、ミヅキがこうしていることには理由があるのだと台詞の言い方一つで伝えきったのが本当好きだった。
なぜこういう立ち位置になったのか、ということを考えさせる悪役って個人的に大好きで、実はリンダと並ぶくらいミヅキが好きだったりします。倉持聖菜さん(ソラ役)
兎にも角にも声がすんごい印象的! 田上さんブログで、彼女の声を「スーン、ピーンと響く素敵な声を持っています」と評していたけど、わかるわかる、となるやつ。
お、もしかしたらソラちゃんは目が見えな…い?ということをそれとなく観客側に悟らせるって結構難しいことだと思うのだけど、それをさらっとやってのけるし、ソラちゃんの真っ直ぐなほどに「座長(演人)が好き!!」ってのが演人一座を象徴する空気感を出していて。
劇中劇のソラちゃんの演技力が、中の人(むしろ外の人?)同様高くって、恐ろしい子!!となりました、本当ソラちゃんかわいい。安達優菜さん(ナミエ役)
個人的に一番共感できるキャラクターであり、ある意味観客側に一番近い人間ではないかと考えていて、とてつもない親近感。
流れ流されフラフラと、反対運動に参加してみたり、職を転々としてみたり、政府側に寝返ったり。
ただ彼女は「死にたくない」っていうので、それはそれで大事なことだし、最後、幸音の一座にナミエがいることによって、簡単には幸音たちは死なないってどこか漠然とした安心感があるし。
表情がクルクルと変わったりボディーランゲージが多かったり、どことなく田上さん味を感じて、好きなタイプの女優さんなのかもしれないなぁとか密やかに感じていたり。
終幕とか言っているけど、なんとなくまた書きそうな気がする。