再考:厨病激発ボーイ

厨病激発ボーイのDVDが手元に届きまして、改めて観るとやはりエンタメにあふれていて、だけど大人のメッセージがとても伝わる作品だな、と感じているのですが、DVDを見て改めて厨病激発ボーイを考えてみたので、つらつら書いて行きます。

冷泉寺先生の少年時代

中村くんと冷泉寺先生は仕草であったり言葉のチョイスだったり重なる部分があるのだけど、最後のダンスの決めポーズも地味に重なっていた。やはり冷泉寺先生もかつては中村くんのような自分が主人公な物語を書いていた時代があったのではないか。
これ、実は観劇当時の感想で書いたような気がするのですが、ダンスの決めポーズまでかぶっているのは気づかず、やっぱりそういうこと?なんて思うわけでした。

対照

平穏を望む異能な瑞姫ちゃんと、異能はないけどある妄想に浸る厨病ボーイズ。
本当の自分を隠す瑞姫ちゃんと、痛いくらいにさらけ出しちゃう厨病ボーイズ。
自分の思うようにいかないことを他の要因のせいという市ノ瀬くんと実は瑞姫ちゃん対照的に自分のやりたいことにまっすぐな厨病ボーイズ。
大人な冷泉寺先生、大人ではない厨病ボーイズ他面々。
といった具合のコントラストがとても良くって、しかもそれが深い意味を持って終盤の台詞と重なってくるのがすごい。

繋ぎ手

この物語で、唯一観客である私達に語りかけてくるのは瑞姫ちゃんなのですよね。
瑞姫ちゃんがこちらに語りかける内容は、あちらの世界の人たちには「見えない誰かと会話している」みたいな感じに見えちゃって「少し変わってる」子になるし、その突っ走った語り口に語られるこちら側も「普通じゃねー」ってなったり。
という実は絶妙な立ち位置にいて、ぶっ飛んでいるあちら側の世界に観客が置いていかれないような絶妙なポジショニングを発揮している瑞姫ちゃん。

ヒーロー

冷泉寺先生のあの教育方針はある意味生徒を想ってのことで、強要することは置いておいて、後悔なり色々重ねて大人だからこその信念だったりなんですよね。(信念というよりは固執に近い気はしますが)
もはや大人側の私は、冷泉寺先生の言うことが理解できるけれども、もっとうまく伝える方法はいくらでもあるなとは感じずにはいられないわけで。
だけど、大人はスーパーヒーローではないんですよね。
市ノ瀬くんの一連の騒動は、大人に自分の描く大人と現実とのギャップが引き起こしたことであり、野田くんのまっすぐな言葉から、教え子に語る言葉を得た冷泉寺先生のまっすぐな言葉で市ノ瀬くんは救われる、っていう構図がとても素敵だと感じました。
冷泉寺先生が高校を去るときに瑞姫ちゃんに伝言を頼んだ「boys be ambitious , as super hero!!」って、ある意味あの瞬間の野田くんは冷泉寺先生にとってもヒーローだったのだろうなぁ、と思うと胸熱なのです。
個人的に、冷泉寺先生と市ノ瀬くんはアンバランスさがとても人間臭くていいよなぁと感じております。

好きな言葉は「平穏」

この舞台では、瑞姫ちゃんの語りで場面転換をするのですが、その中でとても印象的なのは自己紹介の件。
冒頭の自己紹介では「平穏」に暮らすことにとても重きを置かれていたのだけど、厨病ボーイズのあれこれに巻き込まれて彼らに必要とされる内に、本当に自分が欲しかったのは…というのに気づく。
中村くんに「野田も高嶋も聖のことをかけがえのない仲間だと思っている」という台詞の後の「どうも!聖瑞姫です!」の件の表情・口調・雰囲気の変化にはっとさせられて。
「仲間」と言ってもらえた嬉しさと、本当の自分の気持ちに気づいた「とまどい」がごちゃまぜになったかのようなタノウェイの演技が本当に好きです。
現場では気づかなかったのですが、その場面、瑞姫ちゃんの目に涙浮かんでいたのですね、DVDで見てはっとなった部分。
何度でも書きますが、タノウェイの演技の真骨頂は演技の細かさとグラデーションのような心情の変化を表現できるところだと考えてます。
それがあってこその、最後の吹っ切れたような「どうも!聖瑞姫です!」の自己紹介の厨病ボーイズ並のキラキラ感が際立つなぁと感じました。
この台詞を軸に瑞姫ちゃんの心情を説明してみせたほさかさんの本、本当良いですなぁ。。。